ひたかみ》の国、国々に伝はるありとある歌諺《うたことわざ》、又|其旧辞《そのもとつごと》、第一には、中臣の氏の神語り、藤原の家の古物語、多くの語り詞《ごと》を絶えては考へ継ぐ如く、語り進んでは途切れ勝ちに、呪々《のろ/\》しく、くね/\しく、独り語りする語部や、おもやまゝ[#「おもやまゝ」に傍点]たちの唱へる詞が、今更めて寂しく胸に蘇つて来る。
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をゝ、あれだけの習はしを覚えて此世に生きながらへて行かねばならぬ自身だつた。
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父に感謝し、次には尊い大叔母君、其から見ぬ世の曾祖母の尊に、何とお礼申してよいか量り知れないものが、心にたぐり上げて来た。
だが[#「だが」に傍点]まづ、父よりも誰よりも、御礼申すべきはみ仏である。この珍貴《ウヅ》の感覚《さとり》を授け給ふ、限り知られぬ愛《めぐ》みに充ちたよき人が、此世界の外に居られたのである。郎女は、塗香《づこう》をとり寄せて、まづ髪にふり灌ぎ、手に塗り、衣を薫るばかりに浄めた。[#地付き](つゞく)
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死者の書(終篇)
六
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ほゝき ほゝき
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