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詮索ずきさうな顔をした若い方が、口を出す。
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いえ。第一、こんな場合は騒ぐといけません。騒ぎにつけこんで、悪い霊《たま》が、うよ/\とつめかけて来るもので御座ります。この御館《みたち》も、古いおところだけに、心得のある長老《おとな》の、一人や、二人は筑紫へ下らずに残つて居るので御座りませう。
さうか。では戻らう。
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五
をとめの閨戸《ねやど》をおとなふ風は、何も珍しげのない国中の為来《しきた》りであつた。だが其にも、曾てはさうした風の一切行はれて居なかつたことを主張する村々があつた。何時のほどにかさうした村が、古い為来りを他村の、別々に守られて来た風習とふり替へることになつたのである。
かき昇る段になれば、何の雑作《ざふさ》もない石城《しき》だけれど、あれを大昔からとり廻して居た村と、さうでない村とがあつた。こんな風にしかつめらしい説明をする宿老《とね》たちが、どうかすると居る。多分やはり、語部などの昔語りから来た話なのであらう。踏み越えても這入れさうに見える石畳だけれど、大昔の約束で、目に見えぬ鬼神
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