い気持ちを代作して居てくれたやうな気がした。
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さうだ。「おもしろき野《ぬ》をば勿《な》焼きそ……」だ。此でよいのだ。
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けげんな顔をふり仰《あふむ》けてゐる伴人《ともびと》らに、柔和な笑顔を向けた。
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さうは思はぬか。立ち朽りになつた家の間に、どし/\新しい屋敷が建つて行く。都は何時までも、家は建て詰まぬが其でもどちらかと謂へば、減るよりも殖えて行つてる。此辺は以前今頃は、蛙の沢山に鳴く田の原が続いてたもんだ。
仰るとほりで御座ります。春は蛙、夏は稲虫、秋は蝗まろ。此辺はとても歩けたところでは御座りませんでした。
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今一人が言ふ。
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建つ家も/\、この立派さはどうで御座りませう。其に、どれも此も、此頃急にはやり出した築土垣《つきひぢがき》を築《きづ》きまはしまして。何となく、以前とはすつかり変つた処に参つた気が致します。
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馬上の主人も、今まで其ばかり考へて居た所であつた。だが彼の心は、瞬間明るくなつて、去年六月、三形王のお屋敷での宴《うたげ》に誦
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