79]《せふらく》の家柄、中臣の筋は、神事にお仕へする、かう言ふ風にはつきりと分ちがついてまゐりました。ぢやが、今は今昔は昔で御座ります。藤原の遠つ祖《おや》中臣の氏の神、天押雲根《あめのおしくもね》と申されるお方の事は、お聞き及びかえ。奈良の宮に御座ります 日の御子さま、其前は藤原の宮の 日のみ子さま、其又前は飛鳥の宮の 日のみ子さま、大和の国中《くになか》に宮遷し宮|奠《さだ》め遊した代々の 日のみ子さま、長く久しいみ代々々に仕へた中臣の家の神わざ、お姫様、お聞き及びかえ。
遠い代の昔語り。耳明らめてお聴きなされ。中臣藤原の遠つ祖《おや》あめのおしくもね。遠い昔の 日のみ子さまのお食《め》しの飯《いひ》とみ酒を作る御料の水を、大和|国中《くになか》残る隈なく捜し蒐めました。
その頃、国原の水は、水渋臭く、土濁りして、 日のみ子さまのおめしには叶ひません。天《てん》の神様、高天《たかま》の大御祖《おほみおや》教へ給へと祈るにも、国|中《なか》は国低し。山々も尚天に遠し。大和の国とり囲む青垣山では、この二上、山空行く雲の通《かよ》ひ路《ぢ》と昇り立つて、祈りました。その時、高天の大御祖
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