中でうつとりとしてゐた。その時、語部《かたり》の尼が歩み寄つて来るのを又まざ/″\と見たのである。
[#ここから1字下げ]
何を思案遊ばす。壁代《かべしろ》の様に縦横に裁ちついで、其まゝ身に纏ふやうになさる外は御座らぬ。それ、こゝに紐をつけて肩の上でくりあはせれば、昼は衣になりませう。紐を解いて敷いて、折り返して被《かぶ》れば、やがて夜の衾《ふすま》にもなりまする。天竺の行人《ぎやうにん》たちの著る袈裟《けさ》と言ふのが、其で御座りまする。早くお縫ひなされ。
[#ここで字下げ終わり]
だが、気がつくと、やはり昼の夢を見て居たのだ。裁ちきつた布を綴り合せて縫ひ初めると、二日もたゝぬ間に、大きな一面の綴りの錦が出来あがつた。
[#ここから1字下げ]
郎女様は、月ごろかゝつて、唯の壁代をお縫ひなされた。
あつたら惜しい。
[#ここで字下げ終わり]
はり[#「はり」に傍点]の抜けた若人たちが声を落して言うて居る時、姫は悲しみ乍ら、次の営みを考へて居た。
[#ここから1字下げ]
此では、あまりに寒々としてゐる。殯《もがり》の庭の棺にかけるひしきもの[#「ひしきもの」に傍点]―喪氈―、とやら言ふも
前へ
次へ
全148ページ中142ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング