申し上げた滋賀津彦《しがつひこ》は、やはり隼別でも御座りました。天若日子でも御座りました。天《てん》の日《ひ》に矢を射かける――併し極みなく美しいお人で御座りましたがよ。
截りはたりちやう/\、早く織らねば、やがて岩牀の凍る冷い秋がまゐりますがよ――。
[#ここで字下げ終わり]
郎女は、ふつと覚めた。夢だつたのである。だが、梭をとり直して見ると、
[#ここから1字下げ]
はた はた ゆら ゆら ゆら はたゝ
[#ここで字下げ終わり]
美しい織物が筬の目から迸る。
[#ここから1字下げ]
はた はた ゆら ゆら
[#ここで字下げ終わり]
思ひつめてまどろんでゐた中に、郎女の智慧が、一つの閾を越えたのである。
十四
望の夜の月が冴えて居た。若人たちは、今日、郎女の織りあげた一反《ひとむら》の上帛《はた》を、夜の更けるのも忘れて、見讃《みはや》して居た。
[#ここから1字下げ]
この月の光りを受けた美しさ。
※[#「糸+賺のつくり」、第3水準1−90−17]《かとり》のやうで、韓織《からおり》のやうで、――やつぱり此より外にはない、清らかな上帛《はた》ぢや。
[#ここで字
前へ
次へ
全148ページ中140ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング