い者たちにすら、こんな事を言ふ様になつた。
[#ここから1字下げ]
かう絲が無駄になつては――。今の間にどし/\績《う》んで置かいでは――。
[#ここで字下げ終わり]
刀自の語で、若人たちは又、広々とした野や田の面が見られると、胸の寛ぎを覚えた。
さうして、女たちの苅つた蓮積み車が、廬に戻つて来ると、何よりも先に、田居への降《くだ》り道に見た、当麻の邑の騒ぎの噂である。
[#ここから1字下げ]
郎女様の亡くなられたお従兄《いとこ》も、嘸お嬉しいであらう。
恵美の御館《みたち》の叔父君の世界のやうになつて行くのぢや。
兄御を、帥の殿に落しておいて、愈其後釜の右大臣におなりるのぢやげな。
[#ここで字下げ終わり]
あて人に仕へて居ても、女はうつかりすると、人の評判に時を移す。
[#ここから1字下げ]
やめい/\。お耳ざはりぢや。
[#ここで字下げ終わり]
しまひは、乳母が叱りに出た。だが身狭刀自《むさのとじ》自身の胸の中でも、もだ/\と咽喉につまつた物のある感じが、残らずには居なかつた。さうして、そんなことにかまけずに、何の訣か知らぬが、一心に絲を績み、機を織つて居る育ての姫君が、いとほし
前へ
次へ
全148ページ中136ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング