きあひぢやもん。ほい又出た。おれはまだ藤氏の氏上に任ぜられた訣ぢやなかつたつけな。
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瞬間暗い顔をしたが、直にさつと眉の間から輝きが出た。
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身の女姪《めひ》の姫が神隠しにあうた話か。お身は、あの謎見たいないきさつを、さう解《と》るかね。ふん。いやおもしろい。女姪の姫も定めて喜ぶぢやらう。実は、これまで内々小あたりにあたつて見たと言ふ口かね、お身も。
大きに。
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今度は軽い心持ちが、大胆に仲麻呂の話を受けとめた。
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お身さまが経験《ためし》ずみぢやで、其で郎女の才高《さえだか》さと、男|択《えら》びすることが訣りますな――。
此は、額《ひたひ》ざまに切りつけられた――。免せ/\と言ふところぢやが――、あれはの、生れだちから違ふものな。藤原の氏姫ぢやからの。枚岡《ひらをか》の斎《いつ》き姫にあがる宿世《すくせ》を持つて生まれた者ゆゑ、人間の男は、弾く、弾く、弾きとばす。近よるまいぞよ、はゝはゝゝ。
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内相は、笑ひをぴたりと止めて、家持の顔を見ながら、きまじめな表情になつた。
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