指《および》。
姫は、起き直つた。だが、天井の光りの輪は、元のまゝに、仄かに事もなく揺れて居た。
九
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貴人《うまびと》はうま人どち、やつこは奴隷《やつこ》どちと言ふからなう――。
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何時見ても紫微内相は、微塵《みじん》曇りのない円《まど》かな相好《さうがう》である。其にふるまひのおほどかなこと、若くから氏《うぢ》の上《かみ》で、数十家の一族や、日本国中数千の氏人から立てられて来た家持《やかもち》も、静かな威に圧せられるやうな気がして来る。
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言はしておくがよい。奴隷《やつこ》たちはとやかくと、口さがないのが、其為事よ。此身とお身とは、おなじ貴人《うまびと》ぢや。おのづから話も合はうと言ふもの。此身が段々なり上《のぼ》ると、うま人までが、おのづとやつこ[#「やつこ」に傍点]心になり居つて、卑屈になる。
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家持は、此が多聞天かと、心に問ひかけて居た。だがどうもさうは思はれぬ。同じ、かたどつて作るなら、とつい[#「つい」に傍点]想像が浮んで来た。八年前、越中国から帰つた当座の世の
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