御神楽は、八幡系統の影響を受けて居るものだと言ふ事が、色々の側から説明出来る。だから、才の男[#「才の男」に傍線]を「青農」と同じく、偶人と見る考へはなり立つ。
昔は疫病流行すれば、巨大な神の姿を造つて道に据ゑて、其を祀つた(続紀)。今も稲虫払ひには、草人形を担ぎ廻つて、遠方に棄てる。稲虫が皆附いて行つてしまふと考へるのである。此は穢・罪・禍の精霊の偶像である。其将来した害物を悉皆携へて、本の国へ帰る様にとの考へである。
人間の形代なる祓《ハラ》への撫《ナ》で物《モノ》は、少々意味が変つて居る。別の物に代理させると言ふ考へで、道教の影響が這入つて居るのである。
ともかくも、昔の人の常に馴れて居たのは、自分の形代か、或は獅子・狗犬から転じて、常々身近く据ゑて、穢禍を吸ひとつて貯めて置く獣形の偶像かであつた。だが、人形の起原を単に、此穢れ移しの形代・天児《アマガツ》・這子《ハフコ》の類にばかりは、かづけられない。人形《ニンギヤウ》を弄ぶ風の出来た原因は、此座右・床頭の偶像から、まづ糸口がついたとだけは言はれよう。穢や禍や罪の固りの様な人形《ヒトガタ》ながら、馴れゝば玩ぶやうになる。五|節供
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