明が出来さうもない。だから、此は今|姑《しば》らく預つて、考へて見たいと思ふ。

     六 叙事詩の撒布

ほかひ[#「ほかひ」に傍線]が部曲として、語部の様に独立して居なかつた事は、巡遊伶人としての為事に、雑多な方面を含む様になつた原因と見る事が出来る。
乞食者詠を見ても知れる様に、寿詞《ヨゴト》の様式の上に、劇的な構造や、抒情的な発想の加つて来たのは、語部の物語の影響に外ならぬのである。私は保護者を失うた神人の中に、村々の語部をも含めて考へて居る。其上ほかひ[#「ほかひ」に傍線](祝言)が神人としての専門的な為事でないとすれば、語部にしてほかひ[#「ほかひ」に傍線]、ほかひ[#「ほかひ」に傍線]にして「物語」をある程度まで諳じて居ると言つた事情の者もあつたであらう。元々、神に対してまる/\の素人でない者の事である。語部の叙事詩を、唱へ言の中にとり入れて、変つた形を生み出す様になつたのも、謂はれのない事ではない。
単にとり込んだばかりでなく、本義どほりにはほかひ[#「ほかひ」に傍線]とは縁遠い叙事詩を、其儘に語る様なことも、語部がほかひ[#「ほかひ」に傍線]の徒の中にまじつたとす
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