になつたのである。
社々にだつて、ほかひ[#「ほかひ」に傍線]側の為事はない訣ではない。而も祓へ・占ひ・まじなひ[#「まじなひ」に傍線]などの外は、よごと[#「よごと」に傍線]の語義に関係の深い「祈年《トシゴヒ》呪言(穀言)」・「長寿呪言(齢言)」すら、ほかひ[#「ほかひ」に傍線]の範囲から逸れて了ふ事になつた。
神社の有無が、神の資格定めの唯一の条件になつて来ると、ほかひ[#「ほかひ」に傍線]の対象なる精霊は、位づけが明らかに下つて来る。さうなると、寿詞の価値も自ら低くなつて、高い意味の寿詞並びに、醇化した神の為の新しい呪言が、のりと[#「のりと」に傍線]の名を以て、其にとつて替る事になつたのである。
既に地位の下りかけて居た祝言が、更に分化して一種の職業となつたほかひ[#「ほかひ」に傍線]の徒のはじまりは、どう言ふ種類の人々であつたであらう。一時神主《イツトキカンヌシ》として、ほかひ[#「ほかひ」に傍線]に習熟した村の若者出の人々や、後楯なる豪族に離れた村々の神人の、亡命或は零落した者が、占ひ・祓へ・まじなひ[#「まじなひ」に傍線]と共に、祝言をのべて廻つたのが、此が職業化した古い
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