詞に関係せなくなる。さうなると、此為事に与る神人の資格は、段々下の方に向いて行くであらう。其上、当時まだ、村の君など言ふ頭分を考へなかつた時代の記憶を止めて居た地方では、成年式を経た若者たちが「一時《イツトキ》神主」として、神にも扮し、呪言をも唱へた。其が沖縄ばかりか、大正の今日の内地にすら残つて居るのである。さう言ふ風に若者中、神人・神主と、色々に呪言を誦する人々がある上に、突如として宗教的自覚を発する徒などがあつて、呪言を取扱ふ人々は、必多様であつたに違ひない。
村々の家々と其生産とを予祝する寿詞は、若者か、下級の神人の為事になつて行く傾きのある事は考へられる。村々の宗教が、段々神社制度に飜訳せられて行くと、社に関係の薄い者から落伍しはじめて来る。ほかひ[#「ほかひ」に傍線]は元、神社制度以前のもので、以後も、神社との交渉は尠かつた。其に与る神人も、正しい神職でなかつたりする為に、漸く軽く見られる傾きが出て来た。宮廷では、中臣・忌部の神主が共に呪言を奏するのに、中臣は神社制度に伴ふ側に進み、忌部は旧慣どほりほかひ[#「ほかひ」に傍線]を主とした点からも、前者にけおとされねばならぬ事
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