見ると、呪言には直ちに結果を生じるものと、そして唱へる中に結果の予約なる「ほ」の現れるものとの二つある事が知れる。其次に起る心持ちは、期待する結果の譬喩を以て、神意を牽《ひ》きつけようとする考へである。
内容の上から発生の順序を言へば、天つのりと[#「天つのりと」に傍線]の類は、結果に対して直接表現をとる。ほぐ[#「ほぐ」に傍線]事を要件にする様になるのは、寿詞の第二期である。神の「ほ」から占ひに傾く一方、言語の上に人為の「ほ」を連ねて、逆に幸福な結果を齎さうとするのが、第三期である。わが国の呪言なる寿詞には、此類のものが多く、其儘祝詞へ持ちこしたものと見える。外側の時代別けで言へば、現神なる神主が、神の申し口として寿詞を製作する頃には、此範囲に入るものが多くなるのである。第四期の呪言作者の創作物は、著しく功利的になる。現神思想が薄らぐと共に、人間としての考へから割り出した祈願を、単に神に対してする事となる。
六 まじなひ
呪言が譬喩表現をとり、神意を牽引する処からまじなひ[#「まじなひ」に傍線]が出て来る。大殿祭・神賀詞のみほぎの玉[#「みほぎの玉」に傍線]は既に、此範
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