古い姿を思はせて居るのは、鎮火祭の祝詞である。
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天降りよさしまつりし時に、言《コト》よさしまつりし天つのりと[#「のりと」に傍線]の太のりと言[#「のりと言」に傍線]を以ちて申さく
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と前置きし、
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……と、言教へ給ひき。此によりてたゝへ言《コト》完《ヲ》へまつらば、皇御孫《スメミマ》の尊の朝廷《ミカド》に御心暴(いちはや)び給はじとして……天つのりと[#「のりと」に傍線]の太のりと言[#「のりと言」に傍線]をもちて、たゝへ言|完《ヲ》へまつらくと申す。
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と結んで居る。其中の部分が、天つ祝詞なのである。火の神の来歴から、其暴力を逞くした場合には、其を防ぐ方便を神から授かって居る。火の神の弱点も知つて居る。其敵として、水・瓢・埴・川菜のある事まで、母神の配慮によつて判つて居ると説く文句である。神言の故を以て、精霊の弱点をおびやかすのである。此祝詞は、今在る祝詞の中、まづ一等古いもので、齢言《ヨゴト》以外の寿詞《ヨゴト》の俤を示すものではなからうかと思ふ。但、天つ祝詞以外の文句は、時代は遥かに遅
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