ばひ[#「ばひ」に傍線]にすら、憤りを鎮めるうた[#「うた」に傍線]が行はれたのである。
あまはせつかひ[#「あまはせつかひ」に傍線]とは、海部駈使丁《アマハセツカヒ》の義である。神祇官の配下の駈使丁《ハセツカヒ》として召された海部《アマベ》の民を言うたらしい。此等の海部の内、亀卜に達したものが、陰陽寮にも兼務する事になつたものと見える事は、後代の事実から推論せられる。此等の海部駈使丁《アマハセツカヒ》や、其固定した卜部が行うたことほぎ[#「ことほぎ」に傍線]の護詞や、占ひ・祓への詞章などの次第に物語化し――と言ふより一方に傾いたと言ふ方がよい――たものが「海部物語《アマガタリ》」であり、其うた[#「うた」に傍線]の部分が「天語歌」であつたと言へよう。海部駈使丁の聖職が分化して、卜部と天語部とを生じた。天語部を宰領する家族なる故の天語連《アマガタリノムラジ》のかばね[#「かばね」に傍線]まで出来た。
其伝へた詞章の中のある一類は、神語とも伝へたのであらう。神語は天語の中の秘曲を意味するらしく、天語なる事に替りはない。古くすでに「海部物語《アマガタリ》」を「天つ物語」と感じて、神聖観をあ
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