さて、唱導の語は、教義・経典の、解説・俗讃を意味するのが本義であるから、此文学史が宣命・祝詞の信仰起原から始めた事にも、名目上適当してゐる。が併し、其宣布・伝道を言ふ普通の用語例からすれば、卜部其他の団体詞章・演芸・遊行を説く「海部芸術の風化」以下を本論の初めと見て、此迄の説明を序説と考へてもよい。同時に其は、日本文学史並びに芸術史の為の長い引を作つたことになるのである。併し、私の海部芸術を説く為に発足点になるほかひ[#「ほかひ」に傍線]とくゞつ[#「くゞつ」に傍線]との歴史を説くのには、尚|聊《いささ》かの用意がいる。
[#5字下げ]五 物語と歌との関係並びに詞章の新作[#「五 物語と歌との関係並びに詞章の新作」は中見出し]
先づ呪言及び叙事詩の中に、焦点が考へられ出した事である。のりと[#「のりと」に傍線]で言へば地《ヂ》の文――第二義の祝詞に於て――即、神の動作に伴うて発せられる所謂天つのりと[#「天つのりと」に傍線]の類である。其信仰が伝つて、叙事詩になつても、ことば[#「ことば」に傍線]の文に当る抒情部分を重く見た。其がとりも直さず、うた[#「うた」に傍線]であり、其諷
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