つて、目的・伝統が変化して居る。家筋の側から言へば、更に幾筋の系統を考へる事も出来さうだが、大凡三つの部曲は明らかに認めてもよい。第一|猿女《サルメ》・第二|中臣女《ナカトミメ》・第三|天語部《アマカタリベ》、此三つの系統の語部である。猿女・中臣女の如きは、恐らくは時を同じくして併立して居たものであらうが、勢力にはそれ/″\交替があつた。天語部は後のわり込みで、猿女・中臣女に替つたものと見る事が出来る。
猿女の統率階級は猿女《サルメ》[#(ノ)]君《キミ》で、伝説の祖先うずめの命[#「うずめの命」に傍線]以来、女戸主を原則とした氏族である。此系統の語部は、まだ呪言と甚しく岐れない時代の叙事詩を諷誦したらしく、主として鎮魂法の為に、鎮魂の来歴を説くを職としたやうである。而も此|天《アマ》[#(ノ)]窟戸《イハト》の物語を中心にした鎮魂の呪言に、其誘因として語られた天つ罪[#「天つ罪」に傍線]及び祓《ハラ》へ・贖《アガナ》ひの起原を説く物語、更に魂戦《モノアラソヒ》の女軍《メイクサ》の由来に関聯した天孫降臨の大事などが、一つの体系に組織だてられて来た。
さうした結果、うずめ[#「うずめ」に
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