事が、表題の四字から察せられる。
更に本文に入つて説いて行くと、呪言とほかひゞと[#「ほかひゞと」に傍線]と、叙事詩と歌との関係が明らかになる。「いとこ汝兄《ナセ》の君《キミ》」と言ふ歌ひ出しは「ものゝふの我がせこが。……」(清寧記)と言つた新室の宴《ウタゲ》の「詠」と一つ様である。又二首共結句に
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……我が身一つに、七重花さく 八重花|栄《ハ》ゆ(?)と、白賞尼《マヲシタヽヘネ》。白賞尼《マヲシタヽヘネ》
……我が目らに、塩塗り給《タ》ぶと、|時(?)賞毛《マヲシタヽヘモ》。時賞毛《マヲシタヽヘモ》
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とあるのは、寿詞の口癖の文句らしい。「鹿」の方の歌の「耆矣奴吾身一爾……」を橋本進吉氏の訓の様に、おいやつこ[#「おいやつこ」に傍線]と訓むのが正しいとすれば、顕宗帝の歌の結句の
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おしはのみこのやつこ[#「やつこ」に傍線]みすゑ(記)
おとひやつこ[#「やつこ」に傍線]らまぞ。これ(紀)
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と言ふのに当るもの、此亦《これまた》呪言の型の一つと言はれ、寿詞系統の、忠勤を誓ふ固定した言ひ方と見る事
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