ラ》である。其処で始めて発せられ、其様式を襲《つ》いでくり返す処の伝来の古詞が「天つのりと[#「天つのりと」に傍線]の太のりと詞[#「太のりと詞」に傍線]」なのである。のりとごと[#「のりとごと」に傍線]のこと[#「こと」に傍線]を修飾上の重言のやうに解して来た此までの考へは、逆に略語としての発生に思ひ直さねばならぬのである。
前に述べたとほり、よごと[#「よごと」に傍線]の意義が低くなつて行くのはやむを得なかつた。其と共に、上から下へ向けての詞章は別の名を得る様になつた。其がのりと詞[#「のりと詞」に傍線]である。卑者が尊者に奏する詞がよごと[#「よごと」に傍線]と呼ばれるものと言ふ受け持ちが定まつて来ると、人以外の精霊を対象とする詞章も亦、よごと[#「よごと」に傍線]の外にいはひ詞[#「いはひ詞」に傍線]と言ふ名に分類せられる様になつた。此類までものりと[#「のりと」に傍線]にこめた延喜式祝詞の部類分けは、甚《はなはだ》、杜撰なものであつた。
いはひ詞[#「いはひ詞」に傍線]を諷誦し、其に伴ふ副演を行ふ事が、ほかふ[#「ほかふ」に傍線]の用語例である事は、前章に述べた。宮廷祝詞の中
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