む」に傍線]ともなつて居る。又ほさく[#「ほさく」に傍線]と言ふ形もあつた。うらふ[#「うらふ」に傍線]は、夙く一方に意義が傾き過ぎたが、ほく[#「ほく」に傍線]は長く原義に近く留つて居た様に見える。唯恐らくは、ほ[#「ほ」に傍線]の現出するまで祝言を陳べる事かと思ふのに、記・紀・祝詞などの用例は、象徴となる物を手に持ち、或は机に据ゑて、其物の属性を、対象なる人の性質・外形に準《ヨソ》へて言ふか、全く内的には関係なくとも、声音の聯想で、祝言を結びつけて行くかゞ、普通になつて居た。
其中常例として捧げられた物は御富岐《ミホキ》[#(ノ)]玉である。聖寿を護る誓約《ウケヒ》のほ[#「ほ」に傍線]として、宮殿の精霊が出す――実は、斎部の官人が、天子常在の仁寿殿及び浴殿・厠殿の四方に一つ宛懸けるのである――事になつて居たらしい。大殿|祭《ホカヒ》を行ふ日の夜明けに、中臣・斎部の、官人・御巫《ミカムコ》等行列を作つて常用門と言ふべき延政門におとづれて、其処から入つて斎部が祝詞を唱へて廻る。宮殿の精霊に供物を散供して歩くのが、御巫の役だ。此は、呪言の神が宮殿を祝福し、其と同時に聖寿を賀した古風を残
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