から来る詞章が、度々くり返された結果、きまつた形を採る様になつた。邑落の生活が年代の重なるに従つて、幾種類かの詞章は、村の神人から神人へ伝承せられる様になつて行く。
春の初めに来る神が、自ら其種姓を陳《の》べ、此国土を造り、山川草木を成し、日月闇風を生んで、餓ゑを覚えて始めて食物を化成した(日本紀一書)本縁を語り、更に人間の死の起原から、神に接する資格を得る為の禊《ミソ》ぎの由来を説明して、蘇生の方法を教へる。又、農作物は神物であつて、害《そこな》ふ者の罪の贖《あがな》ひ難い事を言うて、祓《ハラ》への事始めを述べ、其に関聯して、鎮魂法の霊験を説いて居る。
かうした本縁を語る呪言が、最初から全体としてあつたのではあるまい。土地家屋の安泰、家長の健康、家族家財の増殖の呪言としての国生みの詞章、農業に障碍する土地の精霊及び敵人を予め威嚇して置く天つ罪[#「天つ罪」に傍線]の詞章、季節の替り目毎に、青春の水を摂取し、神に接する資格を得る旧事を説く国つ罪[#「国つ罪」に傍線]――色々な罪の種目が、時代々々に加つて来たらしい――の詞章、生人の為には外在の威霊を、死人・惚《ホ》け人の為には游離魂を身
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