方角に發見して、實際の名としたのであつた。尖閣列島にも、舊王朝時代には神の島と眺められて居たものがあつた。
とにもかくにも最初は、死の常闇の國として畏怖せられて居たのが、其國の住者なる祖先及び眷屬の靈のみが、村の爲に好意を持つて、時あつて來臨するのだから、怖いが併し、感謝すべきおに[#「おに」に傍線]の居る國といふことになつて、親しみを加へて來る。一方には畏しさの方面にのみ傾いて、すさまじい形相を具へた魔物の來臨する元の國と言ふ風に思うた處もある。にいるすく[#「にいるすく」に傍線]は其だ。奥羽地方のなもみ[#「なもみ」に傍線]の類の化け物、杵築のばんない[#「ばんない」に傍線]等をはじめとして、おに[#「おに」に傍線]といふ説の内容推移に從うて、初春のまれびと[#「まれびと」に傍線]を惡鬼・羅刹の姿で表してゐる地方が多い。ところが、其等は年中の農作祝福に來るのであるから、佛説に導かれて變化した痕はありありと見える。節分の追儺に逐はれる鬼すら、やはり春の鬼としてのまれびと[#「まれびと」に傍線]の姿を殘してゐる地方が段々ある。幸福は與へてくれるのだが、畏しいから早く去つて貰ひたいと古代
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