に乘せて浪に任せて流すこと、後世の人形船や聖靈船・蟲拂ひ船などの樣にした村々では、海上遙かに其到着する死の島[#「死の島」に傍線]、或は國土を想像したことも考へられる。事實、かういふ彼岸の常世を持つた村々が多かつたらしいのである。此二つの形が融合して、洞穴を彼岸へ到る海底の墜道の入り口と言ふ風に考へ出したものと思ふ。琉球の八重山及び小濱島のなびんづう[#「なびんづう」に傍線]から通ふにいるすく[#「にいるすく」に傍線]も、にこらい[#「にこらい」に傍線]・ねふすきい[#「ねふすきい」に傍線]氏の注意によれば、底の國ではなく、垣・村・壘などを意味する「城」の字を宛て慣はしたすく[#「すく」に傍線]である事は既に述べた。此邊にすく[#「すく」に傍線]を稱する離島は可なりにある。さすれば、にらい國[#「にらい國」に傍線]は必しも海底の地ともきまらぬのである。事實、沖繩諸島では、他界を意味する島を海上にあるとする地方が多く、海底にあると言ふ處はまだ聞かない。大東島《ウフアガリシマ》も明治以前は單なる空想上の神の島――あがるいの大主[#「あがるいの大主」に傍線]の居る――の名であつたのを、偶然其
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