魂を行ふことになつた。量り難く古い道教傳來の昔から、徐々にさうして進んで來て、祓除の根本思想を穢れの排除にあるとさへ古代に於ても考へるまでになつてゐた。吉事祓へが、凶事祓へに先だつてあつたことが考へられなかつたのは、全く道教の影響である。
神に扮し、又、神を迎へる爲の人及び家屋の齋戒や祓除をするのが元であつた。神としての聖《キヨ》さを獲むが爲の人身離脱が、祓へ・禊ぎの根本觀念であることを考へぬ人が多い。凶事祓へを原とする考へ方は、祓への起原を神にあるとした、凶事祓へが主になつた時代の古傳説に囚はれてゐるのである。吉事祓へは、畢竟たぶう[#「たぶう」に傍線]の内的表現で、外的には、縵・忌み衣などを以て、しるし[#「しるし」に傍線]とした。
季節のゆきあひ[#「ゆきあひ」に傍線]毎に祓除を行ふとゝもに、其附帶條件たるまれびと[#「まれびと」に傍線]のおとづれ[#「おとづれ」に傍線]を忘れなかつた。地方によつて遲速はあつても、まれびと[#「まれびと」に傍線]の信仰は、ともかくも段々變化して來ずにはゐない。元々まれびと[#「まれびと」に傍線]を祖先とする考へすら夙く失うて、ある地方では至上の神
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