作るのは、神を迎へる爲の祓へに中心を移して行うた爲で、後の形であらう。併し、春祭りの樣に、今年から人[#「人」に傍線]となる村の男・女兒の爲の成年式は行はない。まれびと[#「まれびと」に傍線]優遇の爲に、家々の巫女なる處女・家刀自の侍ることはあるが、此は別である。一年間の農業、其他家の出來事に對する批判・解説などをしたのは、春のおとづれ[#「春のおとづれ」に傍線]にするよりは、刈り上げ祭りの方が適切である。
私の考へを言ふと、刈り上げ祭り[#「刈り上げ祭り」に傍線]と、新しい年のほかひ[#「ほかひ」に傍線]とは、元は接續して行はれてゐたのである。譬へば、大晦日と元日、十四日年越しと小正月、節分と立春と言つた關係で、前夜から翌朝までの間に、新甞[#「新甞」に傍線]とほかひ[#「ほかひ」に傍線]とが引き續いて行はれた。まれびと[#「まれびと」に傍線]は一度ぎりのおとづれ[#「おとづれ」に傍線]で、一年の行事を果したものであらう。其が時期を異にして二度に行はれる樣になつてからは、更に限りなく岐れて、幾囘となく繰り返される樣になり、更にまれびと[#「まれびと」に傍線]なる事が忘れられて、村の行
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