事の若い衆として、きぢ[#「きぢ」に傍線]の儘に考へられ、とゞのつまりは、職業者をさへ出すことになつたのである。
おとづれ[#「おとづれ」に傍線]の度數の殖えた理由は、常世神の内容の變化して來た爲なのは勿論だが、今一つ大きな原因は、村の行事を、家の上にも移すことになつたからである。村全體の爲に來り臨み、村人すべての前に示現したまれびと[#「まれびと」に傍線]が、個々の村舍《ムラヤ》をおとづれる樣になつた。初めは、やはり村に大家《オホヤケ》が出來た爲である。村人の心を信仰で整理した人が、大家《オホヤケ》を作つた。此大家即村君の家に、神の來臨ある事が家屋及び家あるじの身の堅固の爲の言《コト》ほぎ[#「ほぎ」に傍線]の風を、段々其以下の家々にもおし擴めて行つた。併し、凡下の家に到るまで果してさうであつたかどうかは疑問である。けれども此點に問題を据ゑて、大體、時代が降る程、一般の風習となつて行つたと見てよからう。だから、或廣場、後には神地に村の人々を集めて、神意を宣つた痕跡と見るべき歌垣風の春祭り――秋にも此形を採る樣になつた地方がある――の方が、女の留守をする家々に、一人々々神及び神の眷屬の
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