まいか。此を古今集三木傳のをがたまの木[#「をがたまの木」に傍線]の正體だとする説は、容易に肯定出來ないとしても、をがたま[#「をがたま」に傍線]と言ふ名義を考へると、此木の用途が古今傳授の有名な木に結びつく理由だけは訣る。靈《タマ》は言ふまでもないが、をが[#「をが」に傍線]は「招《ヲ》ぎ」と關係あるものと見たに違ひない。さすれば、にう木[#「にう木」に傍線]にまれびと[#「まれびと」に傍線]を迎へる意の含まれて居ることは推せられる。其上に、此にう木[#「にう木」に傍線]に飯・粥等を載せて供へるのも、供物ではなく、靈代だつたと見れば納得出來る。
おめでたごと[#「おめでたごと」に傍線]に、必、鯖《サバ》を持參した例も、恐らくさば[#「さば」に傍線]の同音聯想から出た誤りではあるまいか。さば[#「さば」に傍線]は「産飯」と宛て字はするが、やはり語原不明の古語で、お初穗と同義のものらしい。打ち撒きの米にのみ專ら言ふのは、後世の事らしい。さば[#「さば」に傍線]は、他物の精靈の餌と言ふ考へで撒かれるのであるが、尚古くは、やはり靈代ではなかつたであらうか。とにもかくにも、靈代としての米のさば
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