此は、若い衆多人數を以て組織せられた團體で、村の寄り場から、勢揃ひをして、樂器を鳴らしながら練つて來るのは、あんがまあ[#「あんがまあ」に傍線]同樣で、此は日中であるだけが違ふ。踊り衆もあり、唐手使ひ・棒踊りの連中もこめて、一組になつて來る。順番によつて、それ/″\藝を演ずるのであるが、其「村をどり」になくてはならぬ定式の演藝がある。其は、第一「長者《チヤウジヤ》の大主《ウフツシユ》」の作法と、第二「狂言」とである。
長者の大主《ウフツシユ》は、其村の祖先と考へられて居るもので、白髯の老翁に扮してゐる。此が村をどり[#「村をどり」に傍線]の先導に立つ一行の頭である。此頭が舞臺に上ると、役名を親雲上《ペイチン》と稱する者が迎へてもてなすのである。此は、正統の子孫の族長たる有位の人と言ふ考へに依つてゐるのである。さすれば、長者の大主に隨ふ人々は、あんがまあ[#「あんがまあ」に傍線]の眷屬と同一の者でなければならぬ。さうして、其演ずる藝もまたあんがまあ[#「あんがまあ」に傍線]の場合と同樣に見てよい。だから、琉球の演劇の萌芽なる村をどり[#「村をどり」に傍線]は、遠方から來臨する祖靈及び眷屬
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