げ終わり]
つね[#「つね」に傍線]は、普通・通常などを意味するものと見るよりも、此場合は、常住、或は不斷の義で、新奇の一時的渡來者の對立として用ゐられてゐるのである。まら[#「まら」に傍線]は、まれ[#「まれ」に傍線]の形容屈折である。尊・珍・新などの聯想を伴ふ語であつたことは、此歌によく現れてゐる。
まれ[#「まれ」に傍線]と言ふ語の溯れる限りの古い意義に於て、最少の度數の出現又は訪問を示すものであつた事は言はれる。ひと[#「ひと」に傍線]と言ふ語も、人間の意味に固定する前は、神及び繼承者の義があつたらしい。其側から見れば、まれひと[#「まれひと」に傍線]は來訪する神と言ふことになる。ひと[#「ひと」に傍線]に就て今一段推測し易い考へは、人にして神なるものを表すことがあつたとするのである。人の扮した神なるが故にひと[#「ひと」に傍線]と稱したとするのである。
私は此章で、まれびと[#「まれびと」に傍線]は古くは、神を斥《サ》す語であつて、とこよ[#「とこよ」に傍線]から時を定めて來り訪ふことがあると思はれて居たことを説かうとするのである。幸にして、此神を迎へる儀禮が、民間傳承となつ
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