活いて居る樣である。此樣に大切な神にも拘らず、村によつては猫の怪物と聯想して居ると言ふ風に、どこかに純化しきつた神とは言はれぬ點を交へて居る。かうして見ると、なもみはげたか[#「なもみはげたか」に傍線]との隔りは、極めて纔かなものになつて來るのである。
おなじ八重山群島の中には、まやの神[#「まやの神」に傍線]の代りににいる[#「にいる」に傍線]人《ピツ》を持つて居る地方も、澤山ある。蛇の一種の赤また[#「赤また」に傍線]、其から類推した黒また[#「黒また」に傍線]と言ふのと一對の巨人の樣な怪物が、穗利《フウリイ》祭に出て來る。處によつては、黒また[#「黒また」に傍線]の代りに、青また[#「青また」に傍線]と稱する巨人が、赤また[#「赤また」に傍線]の對に現れるのもある。此怪物の出る地方では、皆、海岸になびんづう[#「なびんづう」に傍線]と稱へる岩窟の、神聖視せられて居る地があつて、其處から出現するものと信じて居る。なびんづう[#「なびんづう」に傍線]は、巨人等の通路になつて居るのだ。
にいるすく[#「にいるすく」に傍線]と言ふ處が、巨人の本處であると考へて、多くの人は海底にあると説く
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