先生は或はその考へ方に多少反対なさるかも知れませんけれども、譬へば、なも[#「なも」に傍線]と言ふ言葉、えも[#「えも」に傍線]又はきゃあも[#「きゃあも」に傍線]と言ふ言葉など、我々は聞いてゐると甚だ、心苦しいやうな心持がしますけれども、併しこの地方にとつては、非常に厳密な事情で、この言葉をやめてもつと上品な言葉を言へと言はれたら、やはり遠慮してしまふでせう。
そしてなも[#「なも」に傍線]、えも[#「えも」に傍線]、きゃあも[#「きゃあも」に傍線]を保護しようと言ふ方が多いと思ふ。方言の強さはそこです。結局それが強まつて国語に対する愛と言ふ事になりますから、なにも国定教科書の、文部省の属官が作つたやうな文章、それに出て来る言葉を我々が使はなければならぬことはない筈です。文部省の文章を作る人はまう少しいゝ者が雇はれたらいゝと思ふ。ですから、何を見ても余りいゝやうな文章はありません。
なも[#「なも」に傍線]と言ふ言葉は既に研究した人があるけれども、我々から言へば、人に呼びかけるのになあ[#「なあ」に傍線]、もし[#「もし」に傍線]とかう言うたのが、なも[#「なも」に傍線]になつたので
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