傍線]と言ふ言葉は訣つてゐる。又やみ[#「やみ」に傍線]と言ふ言葉も訣つてゐる。だからまう一つ訣らないと気持が悪い。私は知りませんけれども、事実ある地方では瘧の時坊主が出て来て――子供だつたのでせう――子供がそつと来て、蒲団の上に乗るんです。さうするとふるひだす。行つてしまふとふるはなくなる。出て来ると又ふるふ。さう言ふ事を申します。だからわらはやみ[#「わらはやみ」に傍線]と言ふ事は訣りますね。多分、ではない、さうに違ひないと言ふ事が出来ます。

     三 文学者の階級と言語伝承と

民間伝承の種類を私が申す必要はないんですけれども、私の話が国語に関する事ですから、いきほひ、その他との限界をつけなければなりません。つまり、言語を以てする伝承、所謂言語伝承。それから物を以てする伝承、物体伝承とでも名前をつけて置いてよろしいでせう。それから行動を以つてする伝承、行動伝承。それから心を以つてする伝承、心意伝承。これは柳田先生が、心意現象と言ふ事を言ひ出されまして、他ではさう問題になつてゐないやうですけれども、我々は新しく人間の心意の上の、心の上に伝へられて行くものに就いて、観察しなけれ
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