春の始めに、代掻きの舞ひを舞つたり、植付けの舞ひを舞つたり、刈上げの舞ひを舞つたりする、「春田打ち」など、皆神様が来てゐるものとして、慎んでをつた。だから、このあまつゝみ[#「あまつゝみ」に傍線]と言ふのも、霖雨期の物忌みだらうが、それが同時に、「天上の罪」だと言はれてゐるところの、「天つ罪」の内容の説明になつて来る。古事記、日本紀の「天つ罪」として勘定してゐるものを見ますと、総べて、田に関係がある。田に関係のないものはないのです。田の植付けから刈上げ祭りまでの間に、慎みをせなければならぬ事を犯した、物忌みすべきをせなかつたことに対する個条をば、「天つ罪」として勘定してゐるのです。さうすると、我々の考へ方を申しますと、「天つ罪」と言ふのは、昔の人が天の罪と考へてゐたゞけで、却つて、万葉集にあるところのあまつゝみ[#「あまつゝみ」に傍線]と言ふ言葉の意義である、雨の物忌み、まう少し言ひかへれば、霖雨期の謹慎生活、禁慾生活と言ふ方が古いのです。即ち「霖忌《アマツヽミ》」です。
それが、だん/\天の罪と言ふ風になつて来た。それは、罪と言ふ言葉と、慎みと言ふ言葉と、つゝみ[#「つゝみ」に傍線]
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