で叶ふものとかう見て戴きます。
昨日以来、大体に於いて、只今の民俗学の概念はお汲み取り下さつたものと存じます。それで、もと/\民俗学と言ふ事に就いて話して居りましたら、大変な時間のかゝる事ですから、それは飛越して、先へ話を進めて行く積りでをります。私共の一部の間では、若し許して戴くことが出来れば、民俗と言ふ言葉を註釈する為に「前代の知識」と言ふ言葉を使つても良いと考へてをります。果して、前代の知識と言ふのが完全に当て嵌るかどうか訣《ワカ》りません。民俗でなくても、前代から伝つてをる知識と言ふものは沢山あるんですから、完全でないと言ふ事は大体感じる事が出来ますけれども、さう言つてしまへば、何だつてそれ程完全なものはないんですから、先づ、前代の知識と言ふ位の事を以て、民俗と言ふ言葉の説明に代へて、話をして行きたいと思ひます。
民俗学の為事《シゴト》としては独立の民俗学、民俗学それ自身独立してやつて行つてゐる方面、それからまう一つ補助学科としての民俗学がある。つまり、学問の方法としての民俗学で、この二つの方面がございます。この第二の方の、方法として用ゐられる民俗学と言ふものゝ方が、比較的世間
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