かりを使ひ、眺め[#「眺め」に傍線]の字を宛てるながめ[#「ながめ」に傍線]と混同して、ながむ[#「ながむ」に傍線]・ながむる[#「ながむる」に傍線]などゝも言ふ様になつたものだらう。
ながめいみ[#「ながめいみ」に傍線]は、五月の雨期の忌みが、飛鳥・藤原朝の頃から、農村の重大事となつて来て、其長期の禁欲生活の印象が、此語及び、略形や、其成語などに、媾事遮断《ツマサカリ》の苦痛や、焦慮・空虚感を表す様に導いたと見られる。
田植ゑ時の村の男の神人生活、五月頃行はれた成年戒の事情から、氏子の身の特徴の言ひ習しへ説き進んで、農村の五月前からの物忌みの、最、長いものとなつた時代の俤を写して見た。農村の細民まで、一般に服した斎忌だから、とりわけて著しくなつたのだ。
他の季節・祭事の物忌みは、村・国の長上者や、神官に限るのが多いから、それ程目立たないのである。けれども、春の祭りに臨まれるまでの主上の冬ごもりなどは、古代に溯る程、久しく忍び難い程の静止・精進の生活を経させられねばならなかつたのである。
       天つ罪
天つゝみ[#「天つゝみ」に傍線]の説明伝説は、記・紀時代の物語には、すさのを
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