ゐる。)一時的の喪を、殯《モガリ》といふのも、仮《カ》り喪《モ》の逆である。形容詞がすべて下へ附いてゐる。かういふ例を見て来ると、我々の考へてゐる語の姿とは違つて居る。
これがもう少し類例が集つてくると、日本語の系統、或は規則に就いての考へを、だん/\改正してゆかねばならぬ様になると思ふ。もつと我々には訣らぬ事が多い。文法的な例を引くと、寝ることを古くはいぬ[#「いぬ」に傍線]と言つてゐる。い[#「い」に傍線]は接頭語だ、などと考へてゐる人もある位だが、之には「安寝《ヤスイ》しなさぬ」といふ語もあれば、「寝《イ》を寝《ヌ》る」といふ形もある。其他、ねに泣く[#「ねに泣く」に傍線]・ねを泣く[#「ねを泣く」に傍線]・ねのみ泣く[#「ねのみ泣く」に傍線]などの形が出て来ると、中等教育などでは、殊に説明に困つて了ふ。説明に困るのは、今の文法が災ひしてゐるからだ。今の文法は平安朝の文法だが、江戸時代の学者でも、訣らぬことは其まゝにして置いたのである。ねを泣く[#「ねを泣く」に傍線]のね[#「ね」に傍線]は、雁がね[#「雁がね」に傍線]のね[#「ね」に傍点]の例の如く、泣くこと[#「泣くこと」に
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