章の持つてゐさうな意味に、附会してゆくことになる訣である。万葉集に出る「いさなとり」といふ語なども、始めは、ある点まで訣らなかつた語であつたのを、始中終使はれてゐるうちには、適当な語が、それについてくる。鯨を取ることだらうと解して、海をくつゝける、といふ風にくつゝけてゆくのだ。かうなつてくれば、もう、讃めるといふ意味は忘れて了ひ、何だか知らぬが、昔からさう言つてゐるから守つてゆかう、といふだけのことになる。併し、どうせ使はねばならぬものなら、成るべく訣らせてゆかう、讃詞を讃められる詞に合せる様にしてゆかうといふことになつて、枕詞といふものが出来てゆくのである。
枕詞の一番古い起源が之である。何だか知らぬが、くつゝけておかねばならぬ詞章がある。それに、之ならば訣るだらうと思ふ様な語を、その下につけてゆくのだ。さうなると、従つて枕詞の利用範囲が拡がつてくるので、一つ/\を見てゆくと、皆、その枕詞の起源の様に見える。起源と言はれるものは、或は幾つもあるかも知れぬが、とにかく、其最初は、今言つた様な、諺から出て来た形だ。だから地名の枕詞は、割合に純粋であり、同時に古くもあると言へよう。ところが
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