、記・紀・万葉・祝詞と辿ると、四五種以上、意義の変化がある。其を比較すると、意義の変化につれて、用ゐられた時代の、異つてゐることが訣る。
祝詞の如きは、神代乃至は、飛鳥・藤原時代以来、伝つてゐる古いものだ、と考へられてゐるが、此は奈良朝の末から、平安朝の初め百年頃までに、出来たものである。延喜式祝詞は、全部新作とは言へないまでも、平安朝に這入るまでに、幾度か改作せられてゐる。古い種をもつてゐながら、文章は、新しいのである。新古、入り混つてゐるのに、何を標準として、解釈したらよいか。神代の用法も、飛鳥・藤原・近江、下つては、奈良・平安の用法も混つてゐる。其も純粋に、時代々々の語を用ゐてゐるのならばよいが、まじなひ[#「まじなひ」に傍線]のやうに、伝承してゐる中に、意味が訣らなくなる。すると、訣らせる為に、時代の解釈の加つた改作をする。語についての考へが、変化して了ふのである。
此種の改作は、一再ならず、度々行はれたものと思はれる。自然の間に起る、語意の変化の外に、忘れられて、訣らなくなつてから加へられた、其時代の合理観があるのである。故に、文章や単語に、誤りがある。若し其がないならば、禍
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