かれて常世に渡つたと言ふ。最古いものと言はれる宝船の画に「かゞみのふね」と書いてあるのは、此船がすくなひこなの命[#「すくなひこなの命」に傍線]の乗り物なることを示したもので、学者の入れ智恵の疑はれる点である。唯すくなひこな[#「すくなひこな」に傍線]の古ごとを忘れて後も、蘿摩《カヾミ》の皮に嫌ふべきものを載せて海に棄てた風習があつたものとすれば、蚤の船の類のものとして其古さが加はる訣なのである。
とこよ[#「とこよ」に傍線]の国と根の国とが、一つと見え、又二つとも思はれる様になつたのは、とこよ[#「とこよ」に傍線]が理想化せられて、死の島[#「死の島」に傍線]と言ふ側は、根の国[#「根の国」に傍線]で表される事になつて了つた後の事である。而も、とこよ[#「とこよ」に傍線]は海上の島、或は国の名となり、根の国[#「根の国」に傍線]は海底の国ときまつたのである。
まれびと[#「まれびと」に傍線]の来る島として、老いず死なぬ霊の国として、とこよ[#「とこよ」に傍線]は常夜ではなくなつて来た。恰《あたか》もよし、同音異義の「よ」に富み(穀物)又は齢の意義があつた。聯想が次第に此方に移つて、事
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