せう。かういふ様に万葉集の恋歌には、劇的な、叙事的なものが多くて、此時代は決して純粋な抒情詩の時代だとは言へませぬ。名高い恋愛の歌は、多く男女のかけあひ趣味を離れてゐないものです。さうして平安朝になるまでは、動機から見て、純粋な恋愛詩は認めにくいのです。其平安朝ですらも、遊戯化したものが、多過ぎる程多くあります。併し、さういふ道を通つた日本の恋愛詩が、段々進んで行つて、其後の人々(我々の祖先)に、物の哀れを、ほんとうにしみ/″\と思ひ知らせた。さうして、村々のあさましい惨虐な生活が、段々浄められて行つたのでした。



底本:「折口信夫全集 1」中央公論社
   1995(平成7)年2月10日初版発行
底本の親本:「『古代研究』第二部 国文学篇」大岡山書店
   1929(昭和4)年4月25日発行
初出:「人生創造 第二五号」
   1926(大正15)年6月
※底本の題名の下に書かれている「大正十五年六月「人生創造」第二五号」はファイル末の「初出」欄に移しました。
入力:門田裕志
校正:仙酔ゑびす
2007年8月15日作成
青空文庫作成ファイル:
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