一夜は花街へ行つて習つて来るのだといふ解釈をして居りますが、非常に間違つた解釈であります。
それから沖縄の首里の町から二里程離れた久高《クタカ》といふ島で、大正四年頃まで行はれて居りましたが、――非常に不便だから、其島中申し合せて、やめる事にしたのですが、――さうでなければ未だ続けて居つたでせう、――其島では、嫁さんが最初亭主の家へ行く時、非常に親娘の名残が惜しいといふ様子をして、さて亭主の家へ行つて盃ごとをする。其盃が済むと同時に、女房は家を抜け出して、岩の穴とか、森の中の様な所とか、或は他人の家へ隠れてしまふ。昼は構はないが、夜捕へられるといけないからです。だから、昼は亭主の家へ行つてゐるが、日暮れから明け方までの間は、亭主の目に触れない様な所へ行つてしまふ。亭主や友達が手分けして探しに行く。其島は、東西五町位、南北七八町位の小さな島ですから、直ぐ訣りさうでありますが、なかなか訣らない。其は女でなければ行けない、這入れない所がある。神社の森の中は、男には這入れない。さういふ中へ這入られゝば、見えて居つても駄目です。だから其間亭主はまるでお預けみたいな状態にある。
この島は漁業が盛ん
前へ
次へ
全22ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング