寺で見た時の、ぎよっとした気持ちを以て、念仏芸能の古形を考へたかつた為だ。文学篇の「文学の唱導的発生」に説いた念仏にも、狂言――或は特に、歌舞妓狂言――の発生、分化にも、暗示を含んだものとして、地平社発行の民俗芸術写真集から、借用することにした。色彩から来るいやらしさ[#「いやらしさ」に傍点]が、写真には出ないのは、せんもない。沖縄の分は、凡私が、見当知らずにとつたもので、中には、二度目に同行した、三上永人さんの作も交つてゐる。壱岐の島の図は、亦私の写した中から出した。一枚だけ、絵はがきを複製した。後に出来た要塞地帯の規則に触れない様にと思ふので、執著ある絵も出さなかつた。人形芝居の処に挿んだ写真や銅版画などは、北野博美さんが、人形芝居号の為に、蒐集して出されたものを借用する。その中には、宮良当壮さんの見とり図もある。念仏者の用ゐた人形は、其前年私も写したが、此方が勝れてゐるから、転載させて貰うた。
横山重さんは、私の学問――と言へるならば――に、しん底から愛を持つてくれてゐる。時には脇で言ひふれてゐると言ふ、私への「ほめ詞」を又聞きに耳に入れてくれる。消え入りたい思ひをした事も、二度
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