らに、恋ふれども、逢ふよしをなみ、……石根さくみてなづみ来し……
○……みどり児のこひ泣く毎に、……烏徳(穂)自物わきばさみもち、……昼はも……、夜はも……なげゝども……こふれども、……石根さくみてなづみ来し……
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[#地から1字上げ](右二首、同巻二、柿本人麻呂)
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○おもがたの忘れてあらば(るとあらば)、あぢきなく、男士物屋恋ひつゝ居らむ(同巻十一)
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前の三つの例は、若し「をとこじもの」が、普通考へる様にかゝつてゐるか、疑問だから、稍余裕を置いて考へてゐた。すると、「恋ふ」と言ふ語にかゝつてゐる様にも見える。だが一方、「如く」と一歩の差ある「なるに」「として」など言ふ反対意識を含んで来たものもあることは、否定出来ない。さうした処から、第一類の「じもの」が出来たのであらう。畢竟形容詞の「し」の本来持つた所の「し物」の義が、語となつて現れて来たものと言ふことが出来よう。尚一応考へて見ると、さうした古い「じもの」を以て言ふ固定した表現法があつて、呪詞・宣命・祝詞の表現法の古式としてくり返されてゐる
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