れて(今考へるのとは反対に)来、又さうした意識を以て見る習慣の生じた為に、この形に次第に終止としての実感を持たして来たものと言ふ事情をも、考へて見なければならぬと思ふ。
○
既に枕詞のある部分まで、その成因を説いた。併し、尚此に関係のある枕詞がある。其は「じもの」の形を語尾とするものである。此「じもの」は、飜訳の上において、明らかに二通りに区別出来るものと考へられて来てゐる。
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イ、しゝじもの 鹿児じもの
馬じもの 犬じもの
鵜じもの 鴨じもの
鳥じもの 雪じもの(露じもの?)
うまじもの(――あへ「饗」……)
ロ、男じもの 牀じもの
[#ここで字下げ終わり]
と言ふ風になつてゐるが、前者は、その名詞の持つ或傾向を、全然比喩としたもの、後者は、普通「として」と訳して、前の一類の訳語と通ひ乍ら、意味のやゝ違ふ所を出さうとせられてゐるものである。其だけ、元は全然別のものでなく、意義変化した為に出来たもの、とも考へられる。其には過程として「とこじもの」を置いて見る必要がある。旅行中に草を敷き寝する有様を言つたので、牀の如
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