ある。「まし」においては、「もの」に接続するのが普通である。
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○竪薦も持ちて来ましもの(履中記)
○岩根しまきて死なましものを(万葉巻二)
○山の雫にならましものを(同巻二)
×
○国知らさまし島の宮はも(同巻二)
○うちなびく 春見ましゆは(同巻九)
○こゝもあらまし柘《ツミ》の枝はも(同巻三)
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かうした結合は、近代では、皆「き」と言ふ形を俟つて行ふものと思ふであらう。「じ」「まし」などでは其がない。又おなじ範疇に入りさうな「らし」なども、「らしき」と言ふ形はありながら、真の連体に用ゐられた痕跡はない。
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○うつそみも、つまをあらそふらしき(万葉巻一)
○うべしかも。蘇我の子らを、大君のつかはすらしき(推古紀)
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そのうへ、「らし」にも、
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○わが大君の、夕さればめし賜良之(神岡の……)、明け来ればとひ賜良志神岡の山の黄葉を。(万葉巻二)
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など言ふ幾分疑はしい使ひ方がある。謂はゞ連体形とも言ふべき「し」の形を持つた形容詞類似の助動詞で、多
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