]わがゐねし[#「し」に傍線]妹は忘れじ……(記。紀、づく……忘らじ)
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此等の例では、「に……し……」と言ふ形式も具へてゐるし、「し」の挿入せられた形跡が、まだ伺はれる。
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……わが哭くつまこそこそは、易く膚ふれ(記紀)
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許存許曾を、許布許曾の誤りだとしてゐるが、日本紀も去※[#「缶+墫のつくり」、第3水準1−90−25]去曾となつてゐるのだから、「こそこそ」でよい。此が、下に「ふれ」(四段形)と第五変化で結んだものと見れば、其までだが、尚考へて見る必要がある。「こそ」の係結の完成する前の形で、「わが哭くつま。昨夜《コソ》こそは、易く膚触れ 妻」と言つた形らしく思はれる。つまり、膚触れし[#「し」に傍点]妻と言ふ義である。若し、此が単に「膚触れし」と言ふだけに止るのでも、「し」と言ふ過程の予期せられてゐることが見える。
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……まさしに[#「まさしに」に傍点]知りて、我が二人寝し(万葉巻二)
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やはり、同じ旧事を説く歌だが、前の歌の様に言ふなら、「わが二人いね(又は、ゐ
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