言へないまでも、職能は変化してゐる。此と似た縁起を説く歌としての
[#ここから2字下げ]
この御酒は、わが御酒ならず、くしの神 常世にいますいはたゝす少御神の神ほき[#「神ほき」に傍線] ほきくるほし[#「ほきくるほし」に傍線]、豊ほき[#「豊ほき」に傍線] ほきもとほし[#「ほきもとほし」に傍線] まつり来《コ》し[#「し」に傍点]御酒ぞ……(記紀)
[#ここで字下げ終わり]
やはり「し」には、詠歎と讃美とが、籠つてゐるやうだ。つまり、感情をわりこませてゐる訣だ。
[#ここから2字下げ]
○つぎねふ 山代|女《メ》のこくは持ち、うちし大根 さわ/\に……(記紀)
   又、うちし大根 根白の白たゞむき(記紀)
○須々許理がかみし御酒に……(記)
[#ここで字下げ終わり]
此も詠歎とも言へるが、「うち大根」と言ふ風に説ける。
[#ここから2字下げ]
○橿の原《フ》に[#「に」に傍線]よくすをつくり、横臼に醸みし[#「し」に傍線]大御酒……(記。紀、かめる……)
○をとめの床のべに[#「に」に傍線]、わが置きし[#「し」に傍線]劔の大刀……(記)
○おきつどり 鴨どく島に[#「に」に傍線
前へ 次へ
全54ページ中28ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング