鬼を追い払う夜
折口信夫
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)語《コトバ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#「からだ」に傍点]
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「福は内、鬼は外」と言うことを知って居ますか。此は節分の夜、豆を撒いて唱える語《コトバ》なのです。此日、村や町々の家々へ、鬼が入り込もうとするものと信じて居ました。それに対して、豆を打ちつけて追うのだと言います。今年はそれがちょうど、二月四日に当るのです。これは家々ですることですが、又社や寺でも、特別に人を選んで、豆撒き役を勤めさせます。
又豆を年の数だけとって喰うこともあります。地方によっては、一つだけ余計に喰べる処もあります。これはもと一つはからだ[#「からだ」に傍点]を撫でたものなのです。つまりからだについた災いを其にうつすつもりだったのです。門《カド》には前もって、柊の小枝を挿して置き、それに鰯の頭――昔は鰡《ボラ》の子のいな[#「いな」に傍点]の頭――をつき刺して出しておいたものです。
節分は冬が行き詰って、春が鼻の先まで来て居る夜と言うことなのです。だからこれらの事柄も、夜に
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