一三 おひら[#「おひら」に傍線]様と熊野神明の巫女
人形を神霊として運ぶ箱の話では、更にもう一つのものに就いて、述べて置きたい。恐らく本論文集では、皆さんの興味の中心になつて居ると思ふが、それは奥州のおしら[#「おしら」に傍線]神である。金田一京助先生の論文で拝見すると、おしら[#「おしら」に傍線]はおひら[#「おひら」に傍線]と言ふのが正しい。おしら[#「おしら」に傍線]と言ふのは、方言を其まゝ写したのだ、と説かれてゐる。この所謂おひら[#「おひら」に傍線]様は、いつ奥州へ行つたものか、此は恐らく、誰れにも断言の出来る事ではないと思ふが、少くとも、此だけの事は言へさうだ。元来、東国にかう言ふ形式のものがあつたか、其とも古い時代に、上方地方から行つた旧信仰が止まつたか、或は其二つの融合したものか、結局此だけに落ちつく様である。
私は、其考へのどれにでも、多少の返答を持つてゐる。先、誰にでも這入り易いと思ふ事から言うて見ると、おひら[#「おひら」に傍線]様と言ふ物は、熊野神明の巫女《ミコ》が持つて歩いた一種の、神体であつたらうと思ふ。熊野神明と言ふのは、伊勢皇大神宮でな
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